Nathalie Lété

 

City:Paris

1964年パリ生まれ。中国人の父とドイツ人の母を持つ女性アーティスト。絵本やセラミック、テキスタイル、リトグラフなど、様々な作品を手掛け日本でもコレクションを展開している。
子供の頃の思い出や毎日の暮らしの中からインスピレーションを得た、彼女のカラフルな作品はユーモラスでハッピー、そしてどことなくシニカルな雰囲気を持ち合わせている。

その作風はフランスだけでなく世界中から愛され、各国のブランドとコラボレーションしている。同パリのブランド、ASTIER DE VILLATTEも毎年一緒に作品を発表するなど、アーティストからも絶大な支持を得ている。

 

インタビュー  2016.9

ご自分について教えていただけますか?

私はフランスで52年以上も前に生まれました。アジア人の父とスラブ人の母の血が混ざっています。自分で思うには、色の感覚とかフォークロア・アートへの関心、メランコリックでロマンチックな一面はおそらく母方から、そして仕事熱心な面や自然や鳥、森の動物たち、童話からのインスピレーションなどについては父方の血を引いている気がします。子供の時からずっとそうでしたから。今でも私は、自分が5歳だった頃と同じ夢と熱意をもって、自分の手を使って何かを作っています。私は孤独が好きなタイプだと思います。そうは言っても時々人に会うのも好きですが。でもそのあと、やっぱり一人になって自分と向き合って創作する時間が、また新たに必要になるのです。私が好きなものは、ダンス、ピアノ、鳥の歌声、教会の鐘の音、ミルラ、ムスク、オレンジの木、ローズ、そして菩提樹の香り。山、庭。海辺で見る日没。薪が燃えるさまや灯されたキャンドルの火を見ること。小川の水のせせらぎや空に浮かぶ雲を見つめること。甘辛い食べ物、もち、グリーンティー、赤いフルーツ、祖母が作ってくれたリンゴのケーキ、それに建築。古い家でだれが昔住んでいたかを想像すること。同時に、モダン建築も好き。コンクリート、木材、ガラス、光、でもちっぽけで貧相な空間も。そして、いろいろなヒストリーや何か新しいものを発見した時に感じるエモーションも好きです。一方で私が怖いものは、水、運転、騒音、人の叫び声。人混みも嫌いですね。18歳の頃、ある占星術師に、『あなたはアートで成功する人です』と言われました。以来その啓示にしたがい、造形美術の学校、ボザール(高等
美術学校)を出て今に至っています。

 

あなたはとても幅広い制作活動をされています。デザイナーとして、またアーティストとしての側面という2面だけでは収まらないように感じます。ご自分では自分自身の活動をどのように見られているのですか?

私は自分自身を造形美術のアーティストだと思っています。自分にとって大切なことは『クリエイション』、『作る』、『具現する』ということで、それはこれまで存在しなかった何かが、自分の想像から出てきてそこに命が宿り、世界に何かを産み落とすという感覚です。でもね、私はよくフラストレーションを感じるのです。まだまだ他にもたくさん作りたいものがあって、他にも学びたいテクニックがありすぎて。でも時間と機会がたりず、自分の日常では特に絵を描いているというところですね。

 

あなたの世界観は、まるで絵本の中に迷い込んだようでもあるのに、その端々に大人の女性の棘や毒をも感じます。あなたのクリエイションの源はどこにあるのでしょうか?

私の作品を見て感じることは本当に人さまざまで、ある人は作品から放たれる幸福感のようなものを見出すかと思えば、別の人はメランコリーを感じたり、そこに恐怖感や不安を感じ取ったり、ポエジーを読み取る人もいるでしょう。もちろん私の作品はそういったすべての混合なのですけれど。私の創造の作業はセラピーでもあります。それは、私の作品が人生の中で他者や自分に関して持つ感情が難なく読み取れる開かれた本のようなものだからです。だから、人生の中でその人がどういう状況にあるかによって人それぞれが感じるあらゆる感情が大なり小なり混ざって汲み取れるわけです。私の喜びや幸福感、不安感。そういったものが創造のテーマになっていると思います。今年は私の夢の中の庭をテーマに本を作る予定なのですが、今回は特にポエジーとか優しい穏やかさをそこに出したいと思いました。私は今、人生の中でより美しいものを探したい、怖くて不安なおどろおどろしいものより、『喜び』の方に向かいたい、そういう時期に来ています。世界には既に恐ろしい出来事が十分にありすぎますから。私の創造の仕事は『忘れる』ためでもあります。

 

あらゆる素材を用いて制作されていますが、もっとも自分らしさを表現できる素材は何だと思いますか?また制作する際に、初めに素材があって作品になっていくのか、またはイメージがあって素材を選ばれているのですか?

私はいつも最初にテーマを考えます。それからオブジェですね。テーマとか色目の世界観が最初
にあって、それを具現するのに素材を選びます。素材は自分の表現のツールになります。

 

あなたの作品はどれも色が溢れています。あなたにとって「色」とはどのようなものですか?また一つ選ぶとしたら、あなたらしい色とは何色でしょう?

色全体が、いつも私をエキサイトさせてくれます。色はまるで、何と言ったらいいのかな、会話のようなもので、ある一つの色にまた別の色が加わり会話がはずんで広がっていく感じです。ポイントは色同士をうまく遊ばせることですね。私らしい色ですか?グリーン、ローズ、サーモンカラーが好きかなあ。視点を変えると選ぶ色も変わって、たとえば自分の着る洋服なら、ローズ、赤、グリーンが多いのですけど、インテリアデコレーションになると、ゴールドとかターコイズブルーなどになってきます。

 

これから作ってみたいもの、携わってみたいプロジェクトなどはありますか?また今進めているプロジェクトがあれば教えてください。

「未来に絶対」と、自分の心に決めているのは、建築家のプロジェクトに参加するコラボレーションです。彼らのホテルやレストランのプロジェクトに参加して内装を担当したり。あと一つ、とても興味があるのは、色々な国に旅行してその国の職人芸に触れ、一緒にコラボレーションすることですね。その国のアーチザン(職人・職人芸)に触れ、その文化とノウハウを自分の世界観とリンクさせること、それをぜひやってみたいです。

 

 

Latest News

アメリカ発エマージングデザイナー、Eckhaus Latta (エクハウス•ラッタ)が、ニューヨークのホイットニー美術館で8月3日(金)より個展を開催。「アート展」として彼らのグッズが購入出来る、ファッション史にもアート史にも前例のない個展となる。ミレニアル世代が生んだ、新しい形のアートビジネスを成立させている形として、世間に話題を生んでいる。期間は2018年10月8日(月)まで。

Eckhaus Latta: Possessed

入場無料

 

99 Gansevoort St, New York, NY 10014

森川拓野「ターク」(TAAKK)デザイナーは、ニューヨーク ファッション・ウィーク内で行われた合同イベント「New York Men’s Day」でプレゼンテーションを敢行した。同デザイナーがNYでプレゼンを行うのは初めて。大判チェックや迷彩など力強いパターンを随所に盛り込み、ストリート感溢れるルックを構成している。テーマは「BASIC ODDITY」。通常はメンズウエアを軸に展開しているが、ウィメンズのモデルをミックスし、よりフラットな演出になった。また、18年春夏シーズンにはクアラルンプール(マレーシア)でファッションショーを行うなど、海外での訴求を強化している。