City : Paris
Designer:Sigolène Prévois, Catherine Lévy
デザイナーのカトリーヌ・レヴィとシゴレーヌ・プレボワはパリの国立工芸学院で出会いブランドをスタート。代表作の4月の花器はポンピドゥ・センターの永久定番商品とされ、クリエイティブな新鮮さを失わない普及の名作となっている。独特でハッピーなネーミングがついたコレクションたちは、使いやすく愛着がわいてくるのが魅力。
INTERVIEW 2016.9
Photo : Ayumi Shino
Sigolène Préboi(s シゴレーヌ・プレボワ)とCatherine Lévy(カトリーヌ・レヴィ)による インテリア・ブランド「Tsé & Tsé associées(」ツェツェ・アソシエ)。 そのデビュー作である21本の試験管を連ねた「四月の花器」が誕生したのは1992年。 フォルムが簡単に変えられて、一輪の花から自由に生けられる花器の提案は はじめにパリのフローリストたちから支持され、その後世界的に大ヒット。 1997年には、ポンピドゥー・センターのパーマネント・コレクション入りを果たした。 2017年5月には「四月の花器」の25周年を祝い、パリのセレクトショップ「Merci(」メルシー)にて、 二人の友人たちがこの花器にオマージュをささげたクリエイションが展示され、この特別な機会に来日するシゴレーヌとカトリーヌに、改めてツェツェについてたずねた。
25周年を迎えた「四月の花器」は、今でも 国を超えて、世界中の人たちに愛されていますね。
デザイナーなら誰しも“、永遠の名作”を作ること を夢見ています「。四月の花器」は、その夢を叶えて くれました。私たちがいなくなった後も、この花器 自身が生き続けてくれる。それはまるで素晴ら しい才能に恵まれた特別な子供を持てたことの ように、とても喜ばしいことだと思っています。 この花器は使ってこそ楽しめるもの。どんな花を 生けても格好良く決まりますし、全く同じアレンジ が出来上がることはありません。花を生けた人は 誰でも、その仕上がりに満足してしまいます。
ご自宅でも使っていますか。
はい。この25年間、私たちの「四月の花器」には 絶えず様々な花が活けられています。25年分のアレ ンジはどれも違ってどれも美しいです。そしてこの 先も、私たちが毎日使い続けるかぎり、数え切れ ないほどのアレンジが誕生していくでしょう。
日本の生け花にインスピレーションを受け、21本の 試験管を連ねた、シンプルで無限大の自由を秘め た「四月の花器」。その制作秘話を教えてください。
とても綺麗で小さな手吹きの試験管のセットが あったのです。花器としてどう使えるかをずっと考え ており、色んな方法を試していました。そして出来 上がった「四月の花器」が中でも最も優れていて、 他とは一線を画した作品でした。
「四月の花器(Vase d’Avril)という名前の由来は?
私たちは二人とも、冬を終え初めて花が咲く春と4月 が好きなのです。フランスには4月1日に行われる、 伝統的な行事があります。紙に描いた魚の絵を 切り抜き、テープでこっそり他の人の背中に貼るのです。この遊びは「四月の魚(エイプリルフィッシュ)」 と呼ばれます。エイプリルフールについたジョークを 明かす合言葉も「Poisson d’Avri(四月の魚)」 なのです。詩的でありながら、面白いですよね!
フランスの花といえば、華やかに季節を束ねる ブーケのイメージがあります。発表当時、この花器 はどのような評価を受けたのですか?最初はパリ のフローリストたちから支持され始めたのですよね。
その通り。「四月の花器」が登場するまでは、フロー リストで丸く整えられた大きなブーケを頼むのが ふつうでした。しかし先述の通り、私たちは以前から 日本の生け花に魅了されていて、伝統的なブーケの ように花々が縛られたり、小さな花は沈んで大きな 花に隠れ、文字通り窒息しているような飾り方以外 の方法があるということには気付いていたのです。 「四月の花器」では、それぞれの花が自分だけの スペースを持つことが出来ます。それにこの花器は、 花無くして単なる美しい置物として存在することはあ りません。花が「四月の花器」に息吹を与え、そして この花器は、全ての花を美しく、居心地よくさせる ことが目的なのです。ですから、初めてこの花器を 紹介するときには、空の状態にしておきたくあり ませんでした。人々が、花を生けたときにどう見える かを想像できないと思ったからです。そこで私たち は、パリ一番のフローリストである Christian Tortu(クリスチャン・トルチュ)に私たちの花器を置いて みませんかと提案したのです。彼は、小さくて詩的な 花を葉や枝とミックスして売ることを始めた、とても 風変わりで素敵な、先駆け的存在でした。そんな 彼は、たちまち「四月の花器」と恋に落ちたのです。
この花器にお花を生ける際のポイントは ありますか?
特別なポイントはないと思います。ただ、無理に左右対称にしようとはしない方が良いかもしれませ ん。ちょうど、花が左右対称でないのと同じように。
世界中で有名な二人ですが、改めてツェツェ・ アソシエについて教えてください。
「ツェツェ・アソシエ」は、1990年に美術大学を卒業 した私たち、カトリーヌ・レヴィとシゴレーヌ・プレ ボワの二人から誕生した会社です。照明や花器、 食器、小さな家具を私たちがデザインし、それを 工場で製作して販売しています。「四月の花器」 は私たちの大きな成功のひとつですが、他にも 「お腹ペコペコのお皿」や「のどカラカラのグラス」、 「キュービスト・ガーランド」などのヒット作があります。
制作の役割分担のようなものはありますか?
ありません。私たちのうち一人が主体となって進める プロジェクトがあれば、次のプロジェクトではもう一人 が主体に。しかし何かが起こるときはいつも、私た ちのエネルギーが組み合わさった時です。
“ツェツェ・アソシエ”。この名前の由来はどこから きているのですか?
私たちが同等のパートナーであるという意味を込め て、2つの同じパーツに分けられる名前にしたかった のです。ツェツェバエ(熱帯アフリカに生息する吸血 性のハエの総称)は人々を眠らせ夢を見させる… それにその名前が気に入ったのです。
名前といえば、商品名も「お腹ペコペコのお皿」、 「キュービスト・ガーランド」など、ユニークですね。 まず言葉があって形が生まれるのですか?それ とも生まれた形に名付けるのでしょうか。
子供が生まれるまで名前を決められないけれど、 顔を見た瞬間にたくさんの候補の中からどれにす るべきか分かってしまう、親のような気持ちです。 ちなみに、まだ作品が完成形でなく研究を重ねて いる間は、私たちはその商品にニックネームをつけ ます。かわいい名前ではないけれど、親しみを持っ て呼べるようにしています。
ツェツェのアイテムに選ばれている色は、どれも二人らしい色です。二人にとって、色とはどのよう なものですか?
実は25年間、デザインする際に使う色見本はずっ と同じものを使っているのですが、今ではいつも 同じページを開くようになりました。ほうれんそう スープの緑、ポピーのピンクや朱色…でも白や黒 も大好きです。
今年の5月、「四月の花器」25周年のお祝いに、 パリのセレクトショップ「メルシー」で約40名の クリエイター達とイベントを開催されましたね。
イベントは素晴らしい出来栄えでした。全ての友人 や家族、私たちのキャリアにおいて関わってくだ さった全ての人々、その過程で友人となった人々 が皆集まり、まるで大きなパーティーのようでした。
このイベントはどのように決まり、形になっていった のですか。
私たちの作品を愛してくれている昔からの友人た ち、作家からファッションデザイナー、パティシエ、 音楽家、舞踏家に至るまで、たくさんの人たちと 「四月の花器」をシェアするときだと思ったのです。 そこで彼らに、この花器に対する彼ら独自の解釈 を与えてほしいと依頼しました。 結果は、とても楽しく面白いものとなりました。まるで 「四月の花器」が舞踏会に行くために、色んな衣装 を着せられているのを見ているかのようなのです! だから、展示会のタイトルは『マスカレード(仮面 舞踏会)』にしました。
晴らしい方々が参加されていますね!
そうですね、これだけキャリアが長いと、ほとんど の人たちと友人になってしまうのです。そして皆が 「四月の花器」を愛してくれていて、生まれたとき から使っているような人たちです!
その制作過程はいかがでしたか?
とても不安に思っている人もいれば、とても楽しみな がら進めている人もいました。完全に自由制作だった ので、私たちを参照したり引用する必要も無ければ、 私たち自身も干渉したり邪魔したりしたくはなかった のです。
二人も作品を出品していますね。
この作品はジョークなのです。「四月の花器」を通 して見せる、少しやつれているけれどまだまだ独 創的で、役に立てて、擦り切れたり破れたりしてい るけれど結構きれい、そんなセルフポートレート です。6月にH.P.DECOでご覧いただけます。
今回、新しい「四月の花器」を2種類、発表されま した。それぞれについて教えてください。
まず「 édition tsécial」(エディション・ツェシアル )には、「四月の花器」をデザインしたときに試した全ての金属コーティングが使われています。「四月の花器」制作時はそのうちの一つに絞らなければ いけなかったので、悩んだあげく最終的に亜鉛を 選んだのですが、今回はその他全員にチャンスを与えたのです!
グリーン系とグレイ系のコンビネーションはとても素敵です。
また、もう一つのジンジャー色のものは・・・今まで 何度も「四月の花器」の試験管を色付きガラスで 制作することを考えたことがあるのですが、色が花に影響してしまうのではと思い、断念していました。 でも「Le Petit Vase d’Avril Roux」(マリー・ク レール・メゾン誌の創刊50周年記念コラボレー ション限定の「四月の花器」)の、このジンジャー 色だけは、面白いことにどんな花ともマッチして しまうのです。そこで、制作することにしました。 そしてもう一つ、アスティエ・ド・ヴィラットとコラボレーションした25個 限 定 の 花 器 も! 私 た ち は お互いの作品や世界観が大好きで、とても良い 友達同士なので、以前からずっと考えていたこと をやってみるチャンスでした。
パリでの展示『マスカレード(仮面舞踏会)』から 27作品、そして、この新しい2種類の限定の「四月の花器」を東京のH.P.DECOで6月から展示します。 東京でのイベントはどのようなものにしたいですか。
私たちも、いつも私たちを支えてくれ、日本での たくさんの冒険を共にしてきたH.P. DECOでこの 記念年を祝えることをとても嬉しく、光栄に思っています。たくさんの花を飾りたいです!
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Eckhaus Latta: Possessed
入場無料
99 Gansevoort St, New York, NY 10014
森川拓野「ターク」デザイナーが、ニューヨークでプレゼンテーションを開催
2018.02.09 7 years ago